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精神科医の資格:試験情報も書いてるよ。

精神科医の資格って

 2023年2月5日 私が理事長をしている若手精神科医の会というNPO法人の交流会がありました。若手の先生が「専門医、サブスペシャリティ」について講演をしてくれました。若手の医師は、「資格」をとることを一旦の目標として最初のキャリアを進むことが多いですね。

 医師以外の人から精神科受診について質問される時にも「どういう病院に行ったらいいの?」「信頼できる先生かな?」と聞かれることが多い。「専門医とか、指定医とか、精神科医についてはなんか肩書きもわかりにくいし、書いてある先生、書いてない先生もいるじゃん!」 そうだよね〜って感じです。

 この記事は、精神科の二大資格である、精神科専門医、精神保健指定医 について簡単に解説してみます。これから精神科医になる人には役に立つかもしれない、オタッキーな記事ですね。そして、最後にはそれらが受診する時の目安になるのかについて、考えてみます。(いっぺんに書けないので、徐々に書き足していきます)

目次

まずは結論から

精神科医の大きな資格には、精神科専門医精神保健指定医がある

専門医、指定医をとることで、業務の幅は広がる。特に指定医は、病床のある病院で勤務医をする上では取得するべし。

資格取得に向けた専門研修は、急性期疾患も取り扱っている大きな精神科病院か、閉鎖病棟、隔離なども請け負っている総合病院で行うことがおすすめ。いくつかの病院を渡る必要もあるかも。

精神科医の資格は、無いより有る方が信頼感は持てるし、精神科医として できることも・給料も 増えるが、資格を持っているからと言って必ずしも技術の保証にはならない

「日本精神神経学会所属!」だけ書いてあって、しかし「専門医」と書いていない医師は、、、見極めが必要。

精神科医の資格について

精神科医の資格については、大きく二つあります。

  • 日本精神神経学会 の 精神科専門医 
  • 厚労省が指定する 精神保健指定医

それぞれを少し詳しく見てみましょう(追記していきます)

精神科専門医

精神科専門医は、精神科の一番大きな学会である、「日本精神神経学会」が認定する学会認定専門医です。

6年間大学で勉強し、医師免許を取得後、2年間の初期臨床研修、最低3年間の精神科臨床研修を終えたのちに、試験、レポート、口頭試問をクリアすると専門医の資格が得られます。

専門医になるとできること。実はほとんど何もありません。
いくつかの切り札的薬剤(クロザピン、コンサータなど)を出せるスタート地点に立てる、ぐらいでしょうか。

研修期間について

2年の初期研修まではほぼ誰でもするとして、3年の精神科臨床研修が結構ややこしいです。確かに3年は最短ですが、

  • 症例(特定の病気を持っている患者さん)を入院・外来共に大量に見る必要がある
  • その中で出会った患者さんのレポートを書かないといけない。そこにどんな治療的な関わりをしたか、ということを綿密に書く必要がある。
  • 精神科専門医指導医のいる先生の元で常勤で働く必要がある。(どこでもいいわけじゃない・一人の指導医に3人までしか若手はつけない)

え?そんなに大変?と思うかもしれませんが、これらの条件のために、3年では済まないということが多々あります。

例えば、症例。

精神科病院には、内科や外科の病院の中にある「総合病院」と言われる病院と、精神科患者さんだけを見る「単科精神科病院」という病院があります。

「総合病院」には、精神科の外来はあっても、入院病床がないことも多いです(精神科入院はあまり金にならないから作らない)すると、いわゆる統合失調症や双極性障害の入院症例(レポート提出要)は見ることができません。また「単科精神科病院」は、身体的な合併症を見る能力が弱いところが多いです(例えば、MRIがない、CTは解像度が低い、採血が院内ですぐに結果出ないなど。私がバイトしに行ってる病院は、CTや胸の写真が今でもフィルムに焼かれますし、土曜の午前で採血は終わり、土曜夜から月曜の朝までは採血の結果が出ません)ですので、例えば摂食障害のような・若い・生死に関わる病気 は入院させない、というような方針をとっている病院もあるのです。また、専門医取得要件となるリエゾン(内科との連携)をちゃんとできない病院もたまにあります。

つまり、一つの病院だけに勤めていると、必要とされる症例が集まらないことが多いんですね。そういう理由から、若手の先生はいろんな病院を渡り鳥のように渡りつつ、症例を集める必要があります。

しかし、精神科医って、一人の患者さんを3年とか4年とかみて、始めて学べることってたくさんあるんですよね。だから、渡り鳥をしてしまうと、表面上の理解はすすめども、どういうふうに回復していくのか、どう社会で生きていくのか、という縦に長い治療経過を見れなくなってしまうのです。

レポートも結構大変です。出す本数は、最低8本〜10本程度になることが多いです(経験症例と、経験場面の組み合わせが必要で、人によって本数が違う)病院Aから病院Bに行くと、病院Aのカルテは当然見れない状態になりますので、レポートを書くために病院に申告してカルテを見させてもらいに行きます。病院Aにいる間にレポートを書けばいいんですが、結局医師6年目ぐらいに専門医レポートを出す時に修正したい、あぁカルテが見れない、と必ずなります。

ちなみに、レポート落ちというのがあり、このタイミングで「口述記述試験受けに来れません」があります。

試験について

筆記試験は2時間で100問程度の5択問題が出題されます。

精神科医専門医試験、というものがおそらく14-5回今まで行われています。実は2-3 年前まで、専門医試験の過去問は正式な問題集・解答集が1-3回までしか公開されていませんでした。答えが一意に決まらなさそうな問題ばかりが並ぶ試験で、マニアックな問題も大量に出る状態でした。疾患の知識、臨床問題から、薬理の知識まで、本当に広範囲の疾患、治療、成因などを聞かれます。若手が見たこともない(経験ができなかった)疾患についても、バシバシ出るので、たくさん勉強が必要です(勉強しても正しい答えだと自信は持てない)

私が専門医をとった後に、一気に9回目ぐらいまで公式の問題集・解答集が出たと聞いています。それまでは、たくさん後期研修医がいる病院だと、勉強会が開催されて過去問を解いて相談したりすることができるわけですが、後期研修医は自分しかいません、一人です、というような状況だと、不安です。みんながどの程度勉強しているのか、最新の知見はどうなんだろうか、などなど。レポートの記載についても、人と見比べたり、ちょっと前にレポートを書いた先輩に添削してもらえたりすると、とても安心です。JYPOような若手の精神科医同士でコミュニティを作れる場所に入るというのも一つです。

口頭試問

待合室は、会場によりますがホテルの食堂などのこともある様子。私は新大阪の貸し会議室みたいなのだったと思います。レポートコピーは持ち込み可ですが、書き込みはダメでチェックされると。

口頭試問は、3名程度の偉い先生との口頭試問になります。実はこれが当たり外れ大きいらしく、私が受けた時は、私の部屋だけ大幅に延長している(=試験官たちがめちゃくちゃ細かく聞いてくる)状態でした。会場は、東横インだった人はシングルの一般客室だったこともあると(絶対にベッドは使うなと言われたとか笑) 私は一般的な会議室でした。
聞かれる内容は、「書いたレポートに関して」と「共通症例について」があります。(私はこの順でしたが、逆のこともあるそう)

書いたレポートに関して:自分で出した10本弱のレポートのうち、私の時は2本が抽出されて(他の人は1本だったこともあったと)、その内容について聞かれます。だいたい児童が一本、もう一本が別のもの、というのが多いようです。私の時は、「どうしてこの症例をレポートにしようと思ったの?」という話、「症例の概要説明」「その児童と、兄弟の関係は?親子関係は?」といった、背景への理解をどの程度進めているか、発達側面、心理側面にどれだけ踏み込んでいるか、というところも問われます(そう、だから(少なくともレポートにする)症例については、病気への理解だけではなく、その人の生活や人生、思考や心理の流れを見る必要があるんです)

共通症例について: 私たちの時は、筆記試験の後に、部屋に入れられて、列ごとに仮想症例が書かれたA3の用紙を渡されました。メモをほとんど取れない中で、どういう症例かを指定された20分ほどの時間で把握します。上記と同じ面接官に、2本のレポートの問答の後、共通症例について聞かれます。「精神科的現象を全て説明」「どういう鑑別があるか」「どういう除外診断をする必要があるか」や、「検査」「治療方針」などを聞かれた後、ロールプレイがあります。受験者は医師役、試験官たちは患者と、家族といったような形で、治療についての説明や方針の共有などをし、そこで問題のある面談をしないかどうかをチェックされるのです。


これがね、正直面白いの。私の時はアルコール依存状態の社長と、社長夫人、側近の人、みたいな設定だったのだけど、社長がベロベロで(おっさん迫真の演技)「うぃー、ひくっ、大丈夫だよ」なんていう中で、夫人役(おっさん)が「なんとか入院させてくださいよ!」と泣き叫び、側近の人(おっさん)も「社長!大丈夫ですから、体をととのえてください!」みたいなのを絶叫するの。ぽかんとするよね。(これやってたからわしの部屋、長かったんやろなぁ) 患者さんに強制的な治療にならないように、病気の説明をしたり、解釈モデルを聞いたり、みんなの意見をまとめたりしながら、治療に乗せていく、という面談をできるかどうかを問われます。「家族も言ってるから入院しようよ〜」みたいな雑な説明だったり、「やばい病気だから!すぐ入院しよう!」みたいな嘘を言ったりするとダメなんでしょうね。

このあと、筆記試験落ち、口頭試問落ち、というのも発生します。ここまでパスできたら、精神科専門医です。

専門医になったら

ともだち100人 できるかな。 100人で食べたいな 富士山のうえで おにぎりを 

この曲に「友達100人できたら、富士山の上では101人で食べるだろ!」と小さい頃から思っていた、という精神科医の友人がいまして。先日彼の息子が、全く同じ「101人やろ!」とツッコミをして、とても嬉しかったという話をしていました。微笑ましいですね。

はい、専門医になったらできること、ですが、実はあまり専門医だけで「何ができる」というのはないんです。

クロザピン という統合失調症治療の切り札のような薬を出せるようになる(実際には処方医登録が必要)とか、

コンサータ というADHD治療薬を出せるようになる(これも登録が必要)とか。程度ですね。

実際には、クロザピンはかなり限られた医療機関でしか使えませんので、取らなくても実質困ることはないことも多いです。

また、一度取ったら、学会に参加して単位を集めて、5年に1度更新が必要になります。その時にまたレポートも書かないといけないとか。

なので、一定確率で開業医の先生は、「取らない」という選択をしたり、あるいは「更新しない=失効」という選択をされる方もいます。

それでも、私は専門医を取って良かったと思います。試験を受けることで勉強しますし、レポートをまとめることで、患者や記録に対して真摯に向き合う姿勢がつきます。自分の面談スタイルが、まずいものではない、という確証を得ることもできます。6年目までに、たくさんの経験をするために必死に頑張った、という証明にはなります。

しかし、専門医資格(指定医資格もですが)は、あくまで医者6年めぐらいの通過儀礼でしかなく、その後にどのような姿勢で精神科医療を行なっているのか、それが良い信頼を持てるものである、ということの証左にはならないのです。

そうはいえ、通過儀礼を行なった=しっかりと精神科の研修を受けた、という証拠は、実は大切です。巷のチェーン展開するようなメンタルクリニックでは、精神科の研修をまともに受けず、院長職をしているような人がたくさんいます。そういう人は、「学会所属!」だけ書いて、「専門医」や「指定医」と言った資格を取っていない人が非常に多いです。個人的な見解ですが「院長(分院含む)が専門医、指定医などの資格をとっていない」のは、、、、大丈夫かな、、、、どうかな、、、と思います。一般的な研修を受けてきていない可能性があるわけですから。院長以外の雇われている先生が、資格を持っていないというのは、単純に若い先生がバイトで来ている可能性もありますし、必ずしも悪いことじゃありませんが。

巷には、本当にたくさんのチェーン展開メンタルクリニックがあります。真っ当に診療をしているクリニックももちろんありますが、収益のためにガンガン分院を増やしているクリニックだと、診断的根拠がないのに発達障害だ、ADHDだと診断されて、高価な自由診療(rTMS)に引っ張られることがたくさんあります。そういうクリニックでは、指定医も専門医も書いていない先生がチラチラいますよね。検索の一番に出てくる、SEO対策ばっちりなクリニック、もし受診するなら、しっかり資格を見ておいた方がいいです。

精神保健指定医

精神保健指定医は、厚生労働省が指定する資格です。医師が厚生労働省からさらに指定される医師の資格は、多分精神保健指定医ぐらいだと聞いたことがあります(難病指定医・母体保護指定医は都道府県)なので、結構精神科医になったからには取ろうと努力されることの多い資格ですね。

6年間大学で勉強し、医師免許を取得後、2年間の初期臨床研修、最低3年間の精神科臨床研修を終えたのちに、「指定医研修会」を受講、その後レポート提出と、口頭試問をクリアすると指定医の資格を得られます。

こちらは、専門医と比べると資格取得によってできることが増えます。

精神保健指定医は、「精神保健福祉法」と呼ばれる法律に則って、以下のような行為(抜粋)を執行できます。

非自発入院(強制的な入院)時の診察:日本の精神医療には大きく二つの入院形態があり、自発入院(任意入院)と非自発入院(医療保護入院、措置入院など)に分かれます。精神疾患が悪化した場合、事物を判断すること(例えば、治療方針の共有や同意)が難しくなることがありますので、時に本人が同意しない場合も入院による治療が必要になります。その際に、病状を正常に把握し、入院以外の治療では問題がでうることを判断し、法に則って入院をしてもらうために、指定医の判断が必要になります。非自発入院は、入院環境という場所にいることを強制させる、いわば人権を剥奪する行為でもあります。病状の正確な把握、必要性を考慮し、それが法律に反する雑な人権掌握にならないようにするために、非常に厳密に管理される必要があります。そのような資格でもありますので、資格としても重さが違うものとなります。

行動制限の必要性の判断:中には、「行動制限」と言われる処遇を入院中の患者さんにお願いすることがあります。これは大きく分けると「隔離」と「拘束」に分かれます。

「隔離」とは、外側から鍵がかかる部屋に患者さんに居てもらうことです。例えば、自傷・他害する行動が頻発していて、一般の大部屋などでは他の入院患者さんに大きな影響を与える、部屋から出られる状況だと、病院の中でで縊首しようとしてしまう(トイレ、ベッド、などなど)ので、部屋に何もない状況にしないと自傷を防げない時など、生命や患者関係に病状が影響を与えてしまう時に、部屋にいてもらうことがあります。これは強制入院よりさらに強い制限となりますので、病状が落ち着いたらすぐに隔離を終了すること、隔離が終了するまでは、必ず医師が病状の診察を毎日すること、と言ったルールが課せられています。

「拘束」とは、拘束帯と言われる器具で、ベッドから離れられないようにする処遇です。これも、患者さんが自傷、他害、あるいは病状により身体的な影響を起こしてしまう時のみに使用されます。
例えば、躁状態(テンションが異常に高く、ずっと動いている、イライラがあまりに強い)人が、他人に殴りかかってしまうとか、統合失調症をもつ患者さんが、幻聴に苛まれて壁に体当たりをしてしまう、怪我するまで頭を殴ってしまう、というような行為、あるいは摂食障害で生命に危機があるほど体重が減っていて、ベッド上絶対安静を保ってほしいのに、運動を続けてしまう、といった行為があると、拘束が考慮されます。
拘束の場合、ベッドに腰、必要に応じて手足なども縛り付けられてしまうので、隔離より強い人権侵害と言えます。そのため、本当に必要な時のみに行い、精神症状が改善次第開放することが必要です。本当に必要な時のみに行われているということを確証するために、拘束の開始時に指定医の診察が必要となります。

他には、電話・面会の制限 なども行動制限に含まれます。

指定医講習会

 指定医講習会は、指定医取得をするために受講必須の講習会です。ここで、さまざまな法律的解釈や現在の法的取り扱いの基本的な話を聞ける+資料を提供してくれます。講師・会場の最後には「症例相談」も乗ってくれて、その症例が申請上問題にならないか、という話も教えてくれることがあります。ここでの講義や資料を指定されるまで十分に熟読・理解する必要があります。

 基本的には受講すれば終わりなのですが、最近は講習会の予約も難しくなっている、という話があります。

私の後輩友人曰く

嵐のチケット並みに取りづらいわけではないけど、夏の沖縄便をマイルで取る並の取りづらさがある」と。彼は飛行機オタなのでそういうことを言いますが、要するに15分ぐらいで枠がなくなるというヤヴァさのようです。

0. 申請までの時系列

5月上旬に指定医の新規申請者向け講習会web受付開始
→9〜11月ごろに受講(受講後1年が有効期限)
→その年の12月または翌年6月に申請(若手は6月ルートがメイン)
というのが定番

1. これまでの予約枠は足りていた

レポート申請のみで済んでいた頃は、申請から合否まで7〜8ヶ月かかっていました。
大体6月に申請して、2月ごろに教えてもらえる、という状況でした。ので、落ちていることがわかると、そこから5月の新規申請者向け講習に受付すれば良い状況でした。
つまり、講習の枠数は、 新規申請者+昨年の落ちた人 で大体コントロールが付いていた状況でした。

2. 口頭試問開始以降、枠がコントロールできなくなった。

しかし、口頭試問が科されると、合否判定に1年かかることになりました。
すると、6月末付で申請したのに、5月上旬には指定されたかどうかがわからない状況です。
そのため「落ちた場合に、受けておかないと2-3年取得が遅れるから」という理由で、「保険で講習会登録する」人たちが生まれたわけです。ほぼ2倍というようなイメージです。これでまず奪い合いが発生しました

3. 今年からは有効期限が3年になった

この問題を受けて、厚労省も問題だと感じたようで、新規申請者向け講習会の有効期限が3年間に延長されるようです。つまり、受けてから3年以内に申請すれば良い状態。すると、いわゆる「保険で受ける」ということは減るわけです。おそらくまだ申請に2年ほどかかるような最若手も受けることになりそうなので、1倍には戻らなくても、多少は枠に余裕ができることになりそうです。逆に、3年以内に申請できそうなら早めに受けておくと良さそうですね。

研修期間について

専門医と同様に3年の精神科臨床研修を必要とします。

  • 入院症例(特定の病気を持っている患者さんで、非自発入院にて加療されている人)をみる必要があります。
  • レポートは、強制入院をおこなった患者さん、その上で隔離、拘束などの処遇をとった患者さんについて記載します。どのような患者さんが、どうして隔離、拘束をするに至ったかを、先輩の指定医の判断のもとで一緒に確認し、主治医として治療的な関わりをしながら、病状が改善し処遇が変化する様子を確認する必要があります。
  • 精神保健指定医がいるところで、精神保健指定医が非自発入院や行動制限をおこなう判断に一緒に付き添って診察する必要があります。

レポートについて

個人的には、専門医のレポートより、指定医のレポートの方が難しいというか、違う頭を使うイメージです。

先ほども記載したように、指定医の診察は「病状の正確な把握、入院の必要性を考慮し、それが法律に反する雑な人権掌握にならない配慮し、治療する」必要があるわけです。

つまり、「病状を正確に判断していること」「(強制的な)入院以外に治療の選択肢に乏しいこと」「法律を理解して、法律に則って入院の判断をしていること」「入院後も、人権に配慮した調整を随時行なって」「主体的に治療していること」がわかるレポートを書かないといけません。前二つはまだ専門医と同じですが、法律や人権保護に則った治療をしていることを主張するのが、指定医レポート独特です。(より正確には、レポートの評価基準という厚労省の文章を読んでください)

実際に、私が知っている「レポート落ち(不適)」した人への審査官からのコメントに

「入院時にせん妄状態にある、と書いてあるが、入院のお知らせを再告知した記載がない」というものがありました。

せん妄状態とは、意識障害が起きている状態であり、その状態で入院の必要性を説明されても、事物を判断できていない可能性があります。そのため、その時点で家族の同意をとって医療保護入院(強制入院)を行う可能性はありますが、意識状態が悪く、本人が入院の必要性を理解できなかった場合は、意識障害が改善した時点まで、告知を延期する必要性があるという、法律の解釈があります。赤本と言われる精神保健福祉法詳解の本を購入し、レポートを書いた後に何度もその文章を読んで、何か言えてないことがないかを確かめる必要があります。

日頃患者を見るのに、法律的に正しい、ということを常に考えるわけではない分、レポートで法律に反していないかをちゃんとチェックすることに、とても憔悴します。

口頭試問について

2020年ごろの指定医申請から、口頭試問が追加されました。私はこの直前に指定医をとっているので、口頭試問はなかったのですが、、、
実はこの口頭試問の内容は、いまだあまり明かされず、「内容を漏洩したら不正行為とみなすわよ」的なことが書かれているので、ほとんど内容を漏らされることはないのですが、知っている限りでお伝えします(通った後輩の話から)

特に、指定医は2016年に不正による指定取り消し問題がありました。レポートの使い回し=自分が見ていない症例でレポートを書く人たちがいたのです。この問題ののちに口頭試問が入ったことを鑑みるに、口頭試問における一番見られているところは、「自分の症例として、しっかりと理解している」ことを伝えられるかだと思われます。

指定医研修会の資料、詳解、自身のレポートを何度となく読み直し、頭に入れておく必要があるでしょうね。

面接の状況:

こぎれいなビルの会議室、東横インとかのこともあるとか?多くの人はスーツを着ていきます。別に必須ではないと思いますが、汚い格好しているので無駄に心象が悪くなるのを避けているのだと思いますみんな。

控室は7名前後でまとめられているそう。トイレに行くにも挙手が必要で、入り口まで誘導、監視がある様子。試験終了後の人との情報交換を避けるために、このような体制になっているそうです。待機時間中は持ち込み資料の勉強可能。

面接会場に誘導。1グループ全体で移動し、その後一人ずつ呼ばれるという形の様子。
試験官2名、厚労省の方らしき人が1名いてビデオ撮影もされているという話です。

試験は、「精神保健福祉法うんたらかんたらに基づく試験です」的な発言内容で始まるのだと。緊張しますね。

レポートがある程度ちゃんと書かれている(望ましいとされている症例が全て提出されている)場合は、「レポートの第○症例について、経過の要約をしてください」という問いになるようです。他は鑑別診断や、症例から学んだことなど。自分の患者なので、だいたいどのような背景だったかもちゃんと覚えていますよね、書いていないような内容も、ちょっと尋ねたら教えてくれますよね、そういうイメージで聴取されるようです。「本当にその症例を担当していたかを確認する」という内容のようです。

レポートのほかに、共通問題があるそうです。行動制限に関する遵守事項などの問題など。後輩は、知っていることを伝えたらいきなり試験官に「終了です」と言われて終わったと。

精神保健指定医になったら

 私の時は、指定されましたと都道府県の保健局から電話連絡が来ました。その後、提出していた顔写真のついた「精神保健指定医の証」が郵送されてきます。

 指定医になった後は、精神科病床をもつ勤務医になる場合はかなり重宝されます。それは例えば、患者さんの病状が悪くなり、隔離や拘束といった処遇が必要になった際に診察が必要になるので、バックアップ役を任されたり、措置入院という行政が絡む入院形態をとるときの診察を任されたりもします。そのため就職・アルバイトする際も給料が多少上乗せになることも多いです。

専門医、指定医を目指すためには

精神科医になり、専門医、指定医をとるために研修をつむには、

経験できる症例数が多
児童、器質性疾患、認知症などをどれも見られるような病院で
・レポートの指導をしてくれる上級医が(複数名)いるところ
・試験対策の勉強を一緒にできる同僚が複数人いるところ

を探す必要があります。これらの条件を一度に満たしうる場所としては、、、

・都道府県の精神医療センターなど

・急性期病床をもつ、大規模な私立精神科病院

・地方の総合病院精神科(急性期病床を持つ)

・一部の大学病院

などが挙げられますが、複数の病院を医局人事で渡っていくことも必要になることがあります。

レポートの指導や勉強は、仲間がいることが大切です。勤務先の先生のみならず、他の先生に客観的に見てもらって、添削をもらうようなことも大切ですね。

研修病院だけで指導や切磋琢磨を賄いきれない場合、JYPOのような若手の精神科医が集う場所で、仲間を作って一緒に勉強するのなんかも、いいかもしれません。最近専門医、指定医を取得した人の生の声も聞けますよ。

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